定時に帰らない理由
久世 湊×朝日 巡 · 第1話
所長が事務所に残る日と、巡が残る日が、いつのまにか一致していた。
事務所の照明は、二十時を過ぎると半分だけ落ちる。久世が決めた設定だった。手元が要る人間はデスクライトを点ければいい、というのがその理由で、実際それで誰も困っていない。
巡は、その半分落ちた明かりの下に、いつからか毎日いた。図面を引く手は速いのに、帰る支度だけが遅い。久世はそれを一度も指摘しなかった。
「まだやるのか」 「所長こそ」 会話はいつもそれで終わる。終わるのに、どちらも席を立たない。
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