最終公演まで、あと三か月
鳴海 蒼×灯火 累 · 第1話
降板を告げに行った鳴海に、灯火は台本を差し出した。
稽古場の床は、十年で色が変わっていた。同じ場所を同じ足が踏み続けた跡が、木目より濃く残っている。
「降ります」 鳴海がそう言ったとき、灯火は顔も上げずに台本をめくっていた。めくり終えてから、それを鳴海のほうへ滑らせた。 「じゃあ、最後の本」 受け取るつもりはなかった。受け取ってしまってから、鳴海はそれに気づいた。
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